バリデーション¶
Vapor のバリデーション API は、データをデコードする前に、コンテンツ API を使って入力リクエストの検証を行うのに役立ちます。
はじめに¶
Swift の型安全な Codable
プロトコルを深く統合している Vapor は、動的型付け言語に比べてデータバリデーションについてそれほど心配する必要はありません。しかし、明示的なバリデーションを選択する理由はいくつかあります。
人間が読みやすいエラー¶
コンテンツ API を使用して構造体をデコードする際には、データが無効である場合にエラーが発生します。しかしながら、これらのエラーメッセージは時として人間が読みやすいものではありません。例えば、次のような文字列ベースの enum を見て下さい。
enum Color: String, Codable {
case red, blue, green
}
もし、ユーザーが Color
型のプロパティに "purple"
という文字列を渡そうとした場合、次のようなエラーが発生します。
Cannot initialize Color from invalid String value purple for key favoriteColor
このエラーは技術的に正しく、エンドポイントを無効な値から守るのに成功していますが、ユーザーにミスと利用可能な選択肢についてもっとよく情報を伝えることができます。バリデーション API を使用すると、次のようなエラーを生成できます。
favoriteColor is not red, blue, or green
さらに、Codable
は最初のエラーが発生した時点で型のデコードを試みるのをやめます。つまり、リクエストに多くの無効なプロパティがあっても、ユーザーは最初のエラーしか見ることができません。バリデーション API は、一度のリクエストで全てのバリデーション失敗を報告します。
特定のバリデーション¶
Codable
は型のバリデーションをうまく扱いますが、時にはそれ以上のことをしたい事もあります。例えば、文字列の内容を検証したり、整数のサイズを検証したりすることです。バリデーション API には、メールアドレス、文字セット、整数の範囲など、データの検証に役立つバリデータがあります。
Validatable¶
リクエストをバリデーションするためには、Validations
コレクションを生成する必要があります。これは通常、既存の型を Validatable
に準拠させることによって行われます。
POST /users
エンドポイントにバリデーションを追加する方法を見てみましょう。このガイドでは、既にコンテンツ APIについて熟知していることを前提としています。
enum Color: String, Codable {
case red, blue, green
}
struct CreateUser: Content {
var name: String
var username: String
var age: Int
var email: String
var favoriteColor: Color?
}
app.post("users") { req -> CreateUser in
let user = try req.content.decode(CreateUser.self)
// Do something with user.
return user
}
バリデーションの追加¶
最初のステップは、この場合は CreateUser
である、デコードする型を Validatable
に準拠させることです。これは拡張を使って行うことができます。
extension CreateUser: Validatable {
static func validations(_ validations: inout Validations) {
// Validations go here.
}
}
静的メソッド validations(_:)
は CreateUser
がバリデーションされたときに呼び出されます。実行したいバリデーションは、提供された Validations
コレクションに追加する必要があります。ユーザーのメールが有効であることを要求する簡単なバリデーションを追加する方法を見てみましょう。
validations.add("email", as: String.self, is: .email)
最初のパラメータは期待される値のキーで、この場合は "email"
です。これは検証される型のプロパティ名と一致している必要があります。二番目のパラメータ as
は期待される型で、この場合は String
です。型は通常、プロパティの型と一致しますが、常にそうとは限りません。最後に、三番目のパラメータ is
の後に一つまたは複数のバリデータを追加できます。この場合、値がメールアドレスであるかをチェックする単一のバリデータが追加されています。
リクエストコンテンツのバリデーション¶
型を Validatable
に準拠させたら、静的な validate(content:)
関数を使ってリクエストコンテンツをバリデーションできます。ルートハンドラの req.content.decode(CreateUser.self)
の前に次の行を追加してください。
try CreateUser.validate(content: req)
これで、次のように無効なメールを含むリクエストを送信してみてください。:
POST /users HTTP/1.1
Content-Length: 67
Content-Type: application/json
{
"age": 4,
"email": "foo",
"favoriteColor": "green",
"name": "Foo",
"username": "foo"
}
次のようなエラーが返されるはずです。:
email is not a valid email address
リクエストクエリのバリデーション¶
Validatable
に準拠している型には、リクエストのクエリ文字列をバリデーションする validate(query:)
もあります。ルートハンドラに次の行を追加してください。
try CreateUser.validate(query: req)
req.query.decode(CreateUser.self)
これで、クエリ文字列に無効なメールを含む次のようなリクエストを送信してみてください。
GET /users?age=4&email=foo&favoriteColor=green&name=Foo&username=foo HTTP/1.1
次のようなエラーが返されるはずです。:
email is not a valid email address
整数のバリデーション¶
素晴らしい、次に age
に対する検証を追加してみましょう。
validations.add("age", as: Int.self, is: .range(13...))
年齢の検証では、年齢が 13
歳以上であることを要求します。もし上記と同じリクエストを試したら、今度は新しいエラーが表示されるはずです。:
age is less than minimum of 13, email is not a valid email address
文字列のバリデーション¶
次に、name
と username
に対する検証を追加しましょう。
validations.add("name", as: String.self, is: !.empty)
validations.add("username", as: String.self, is: .count(3...) && .alphanumeric)
名前の検証では、!演算子を使って .empty
検証を反転させます。これにより、文字列が空でないことが必要です。
ユーザーネームの検証では、&&
を使って2つのバリデーターを組み合わせます。これにより、文字列が少なくとも3文字以上であり、かつ 英数字のみで構成されていることが必要です。
Enumのバリデーション¶
最後に、提供された favoriteColor
が有効かどうかをチェックする少し高度な検証を見てみましょう。
validations.add(
"favoriteColor", as: String.self,
is: .in("red", "blue", "green"),
required: false
)
無効な値から Color
をデコードすることは不可能なため、この検証では基本型として String
を使用しています。.in
バリデーターを使って、値が有効なオプションであるかどうかを確認します。:赤、青、または緑です。この値はオプショナルなので、このキーがリクエストデータから欠落している場合に検証が失敗しないように、required
はfalseに設定されます。
お気に入りの色の検証は、キーが欠落している場合には通過しますが、null
が提供された場合には通過しません。null
をサポートしたい場合は、検証の型を String?
に変更し、.nil ||
("is nil or ..."と読みます)を使用します。
validations.add(
"favoriteColor", as: String?.self,
is: .nil || .in("red", "blue", "green"),
required: false
)
カスタムエラー¶
Validations
や Validator
にカスタムで人が読めるエラーを追加したい場合があります。そのためには、デフォルトのエラーを上書きする追加の customFailureDescription
パラメータを提供するだけです。
validations.add(
"name",
as: String.self,
is: !.empty,
customFailureDescription: "Provided name is empty!"
)
validations.add(
"username",
as: String.self,
is: .count(3...) && .alphanumeric,
customFailureDescription: "Provided username is invalid!"
)
バリデーター¶
以下は、現在サポートされているバリデーターと、それらが何をするのかの簡単な説明のリストです。
Validation | 説明 |
---|---|
.ascii |
ASCⅡ 文字のみを使います。 |
.alphanumeric |
英数字のみを含みます。 |
.characterSet(_:) |
指定された CharacterSet からの文字のみを含みます。 |
.count(_:) |
コレクションのカウントが指定された範囲内です。 |
.email |
有効なメールアドレスを含みます。 |
.empty |
コレクションが空です。 |
.in(_:) |
値が提供された Collection の中にあります。 |
.nil |
値が null です。 |
.range(_:) |
値が提供された Range の内です。 |
.url |
有効な URL を含みます。 |
バリデーターはまた、演算子を使用して複雑な検証を組み立てるために組み合わせることができます。
演算子 | 位置 | 説明 |
---|---|---|
! |
前置 | バリデーターを反転させ、反対のものを要求します。 |
&& |
中置 | 2つのバリデーターを組み合わせ、両方を要求する。 |
|| |
中置 | 2つのバリデーターを組み合わせ、1つを要求する。 |
カスタムバリデーション¶
郵便番号のカスタムバリデーターを作成することで、バリデーションフレームワークの機能を拡張できます。このセクションでは、郵便番号を検証するカスタムバリデーターを作成する手順を説明します。
まず、ZipCode
検証結果を表す新しいタイプを作成します。この構造体は、特定の文字列が有効な郵便番号であるかどうかを報告する役割を担います。
extension ValidatorResults {
/// Represents the result of a validator that checks if a string is a valid zip code.
public struct ZipCode {
/// Indicates whether the input is a valid zip code.
public let isValidZipCode: Bool
}
}
次に、新しいタイプを ValidatorResult
に適合させます。これは、カスタムバリデーターから期待される振る舞いを定義します。
extension ValidatorResults.ZipCode: ValidatorResult {
public var isFailure: Bool {
!self.isValidZipCode
}
public var successDescription: String? {
"is a valid zip code"
}
public var failureDescription: String? {
"is not a valid zip code"
}
}
最後に、郵便番号のバリデーションロジックを実装します。正規表現を使用して、入力文字列がアメリカの郵便番号の形式に一致しているかをチェックします。
private let zipCodeRegex: String = "^\\d{5}(?:[-\\s]\\d{4})?$"
extension Validator where T == String {
/// Validates whether a `String` is a valid zip code.
public static var zipCode: Validator<T> {
.init { input in
guard let range = input.range(of: zipCodeRegex, options: [.regularExpression]),
range.lowerBound == input.startIndex && range.upperBound == input.endIndex
else {
return ValidatorResults.ZipCode(isValidZipCode: false)
}
return ValidatorResults.ZipCode(isValidZipCode: true)
}
}
}
カスタムの zipCode
バリデーターを定義したので、アプリケーションで郵便番号を検証する際にこれを使用できます。バリデーションコードに以下の行を追加するだけです:
validations.add("zipCode", as: String.self, is: .zipCode)